最近では歯科医師の間にも患者さんの間でもインプラントに関する正しい知識が広まってきたため、インプラントの失敗例は以前と比べ減少しています。

しかし、現在も技術や知識が未熟でインプラントの設備も揃っていない歯科医師が、安易にインプラントをして失敗してしまった報告はまだまだあります。

失敗例①上顎に入れたインプラントで蓄膿症になった

インプラントを上顎に埋入する手術をしたときに、上顎洞という上顎の上にある大きな空洞に傷をつけてしまったり、穴を空けてしまってそこから感染した場合に発生します。

上顎洞と上顎の境目には薄い膜があり、インプラント埋入手術時は膜に傷をつけなることがないように注意を払いながらドリルを進めます。

しかし、経験が不足していたり、事前の検査・シミュレーションが不十分であると上顎洞に傷をつけてしまい、炎症を起こして上顎洞に膿がたまったり、ひどい場合にはインプラントが空間に落ち込んでしまったりすることがあります。

膿が溜まった場合は蓄膿症のような激しい頭痛や痛みなどの症状が起こり、日常生活に支障をあたえます。

軽度が軽い場合は投薬等による処置で改善することがあります。術後の管理が大切です。

失敗例②フラップレス手術で不適切な場所に埋入されている

最近ではインプラントを埋入するときに、できるだけ歯茎を切らずに行えるフラップレス法が登場しています。

しかしこのフラップレス法を行うためにはCTによって骨や口腔内を3D撮影し、緻密な計画と多くの前準備のすることが必要で、執刀する歯科医師の豊富な知識と経験があることが前提です。

知識と経験がある歯科医師が前準備をしっかり行った上で執刀するからこそ、歯茎を切って骨を直接見なくても手術が行えるのですが、誤った認識から見よう見まねで行うと、「神経や血管を傷つけてしまう」「骨ではなく歯茎に突き刺さるなど不適切な場所に埋入してしまう」などといったトラブルが起こってしまいます。

血管を傷つけてしまった場合には大量出血が起こるのですぐに分かりますが、神経を傷つけた場合や歯茎に突き刺さってしまった場合では、麻痺が起こる・後から痛みが強くなるなどの症状が起こるといったことが考えられます。

失敗例③骨造成がうまくいかず感染症を起こしてしまう

インプラントを顎の骨の埋入した後、周囲の骨組織と結合することによって、しっかりとインプラントが骨に固定されます。しかし、何らかの原因で骨結合が阻害されてしまうと、インプラントが骨に固定されないため、動揺や脱落が起きる要因となります。

骨結合の失敗の主な原因として、次の4つがあります。

摩擦熱による骨組織の壊死

インプラントを埋入するための穴をドリルで開けるときに、摩擦によってオーバーヒート状態になってしまうと、骨組織が壊死してしまうため、インプラントを埋入しても骨結合が起こらなくなります。

埋入時の位置や角度が不適切

事前にシミュレーションをしたものと違う位置や角度にインプラントを埋入してしまった場合、固定される骨を突き抜ける、埋入後に無理な力が加わるなどが起こることで骨結合の妨げとなります。

初期固定が得られない

インプラント埋入後に骨によってインプラントが固定される「初期固定」は、骨結合の成功に重要な役割をはたします。ところが、舌で患部を押すなどして力を加えてしまうと、初期固定がうまくいかなくなります。

貧血や骨粗しょう症などの全身的リスクファクター

貧血の方やタバコを吸う方は、酸素不足の状態になってしまうため、骨結合が妨げられます。また、骨粗しょう症や糖尿病の方は骨代謝が悪くなるため、骨結合が正常に行われないことがあります。

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