歯周病や虫歯、破折など、犬歯を抜歯するケースはほかの歯と同じような理由が多いです。
ですが、奥歯など以上に審美性や強度が必要となるため、犬歯の治療はインプラントが最適といえるでしょう。

犬歯とは切歯と臼歯の中間にある歯のこと

犬歯とは、別名「糸切り歯」とも呼ばれる人間の永久歯のことです。
永久歯は部位ごとに名称が異なり、前歯を「切歯(せっし)」、奥歯を「臼歯(きゅうし)」、その中間に位置する槍状の鋭い歯を「犬歯(けんし)」といいます。

犬歯は、上下顎にそれぞれ2本、計4本生えており、前歯から数えて3番目に位置しています。

犬歯は奥歯を守り下顎の位置を決めるなどの役割がある

犬歯には食べ物を切り裂いたり、歯を噛み合わせた時に切歯と臼歯に負荷がかからないようにしたりする(犬歯誘導)役割があります。
このため、縦からの衝撃に耐えられるよう、ほかの永久歯に比べて神経が長く、寿命が長いところが特徴です。

また、犬歯は下顎の位置を決めるためにも重要な役割を担っています。

下顎は、頭蓋骨と靭帯や筋肉のみで繋がっているため、不安定な状態です。
そのため、下顎は犬歯の噛み合わせを目印として、状態の安定を保っていると考えられています。

犬歯を抜歯すべき4つのパターン

厚生労働省が公表する「全国抜歯原因調査結果」(全国2,345の歯科医院で行われた調査)によると、抜歯の原因で最も多いものが「歯周病」で37%、次いで「むし歯」が29%と発表しています。

犬歯は最後まで残存しやすいものの、上記のような状態の際は抜歯が必要になります。
ほかに考えられる原因と合わせて、犬歯を抜歯すべき4つのパターンを解説します。

1. 歯周病

歯周病は、歯と歯茎の間で歯周病菌が増殖することで発症する病気です。
歯周病が進行すると、歯の根本部分の骨が溶ける歯周炎となり、歯がグラグラと揺れ始めます。

犬歯のように神経が長い歯でさえ揺れるほど歯周病が進行している場合には、抜歯すべき目安の1つとなります。

2. 重度の虫歯

虫歯も神経に到達し、さらにその先の骨の中で増殖するほど重症化している場合、抜歯の目安となります。

ここまでくると、神経を抜いて被せものをすることさえ難しい状態といえます。

3. 犬歯が折れたとき

歯が折れることを「歯牙破折(しがはせつ)」といいます。
歯の折れ方には2つのパターンがあり、白い歯の部分が折れる「歯冠破折(しかんはせつ)」と、歯茎の中の根本が折れる「歯根破折(しこんはせつ)」があります。

後者の「歯根破折」の際は抜歯が必要となります。

4. 犬歯が八重歯のとき

八重歯とは、歯がずれて生えている状態のことで、特に犬歯に多く見られます。

八重歯の生える場所が悪く口腔内を傷つけている、歯茎に埋没してしまっているなど、犬歯を抜かないと口腔内の問題を解決できない際は、抜歯が検討されます。

犬歯をインプラント治療する3つのメリット

犬歯は口を開けると目立つ部分にあるため、治療の際は実用性が高いだけでなく、見た目が良いことも大切です。
犬歯をインプラント治療する4つのメリットを解説します。

1. 目立ちにくく審美性に優れる

犬歯は前歯に近い部分にあるため、食事や会話の際にも目につく部分です。
そのため、治療の際は見た目が美しいことも大切です。

部分入れ歯やブリッジでは、フックの金具が目立つ、裏側の金属が見えてしまうことがあり、審美性に劣る点がデメリットです。

その点、インプラントではセラミットの義歯をアバットメント(土台)に被せるため、金属が見えることがありません。
美しく自然な仕上がりとなるため、前歯など口元の歯の治療に適しています。

2. 周囲の歯を削らず治療できる

犬歯をブリッジで治療する場合、前歯や隣の歯を削らなくてはいけません。
歯を削ることは、虫歯や痛みのリスクを伴います。

インプラントなら、犬歯を抜いた後の顎骨にインプラント体を埋め込むだけなので、ほかの健康な歯を残したまま治療ができます。

3. 噛む力が維持できる

ブリッジだと、削った周囲の歯に負担がかかるため、咬合力を維持するのが困難です。
特に犬歯は、食べ物をかみ切る、周囲の歯を守るといった役割もあるため、耐久性の高さが求められます。

インプラントなら、顎骨と癒着したインプラント体を利用するため、天然歯と同程度の噛む力を維持できます。

きど歯科